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- 作者: 白川静
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1970/04/25
- メディア: 新書
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こっちは淡々と漢字の生い立ちからその背景について述べている本であります。
いろいろな学説を、甲骨文字に立ち返って批判的に検討しているのだが、門外漢にとってはそんなことよりも、いろいろな漢字の原義に驚かされた。
『義』という字は、羊を儀式の際に犠牲に捧げるという意味だそうだ。『我』という字はもともとは鋸を指していて、『羊』+『我』で義になると。
『辛』という字は、刑罰から来ていて、人の身体に入れ墨を入れる際の太い針を指すとのこと。『文』という字も、人に文様(入れ墨)を入れている姿で甲骨文字に出てくる。「刺すように辛い」というのはあながち間違いでない。
もっと驚いたのが『幸』という字。これは枷の象形で、手に加えるもの。
『執』は両手に枷を加えている形。
『事』はもとは『使』という字と同じであって、『事』を「つかえる」とも読むのだそうだ。祭りの際の使者となる。
執事ってこの原義を単純に足すと手枷を両手に加えられて、祭りの際の使者になる人になってしまうなあ!!
まあ、漢字の意味は変遷があるから、よくよく執事の意味を調べてみる必要があるけどね。
他にもいろいろな漢字の意味が説かれていて、漢字の象形から意味から、漢字が使われていた殷周代の中国の様相を垣間見られて、それも読んでいてためになった。
中国人は他族の人の首を切って、王の墓の周辺に大量に埋めたりとか犬を殺して門の下に埋めたりとか、そういう呪術的な力で災厄から身を守ろうとしていたらしい。漢字からかなりそういった様相が見えてくる。
なんというかすごい研究方法だ。中世史ではどだい無理だね。
何はともあれ、面白い本でした。最近、貴族の日記を読むなら、古代の日記と漢籍に目を通さないといけないと思っていたのだけど、その思いを強くしました。