一昨日(もう一昨日!!)東寺領山城国上久世庄を歩いてきた。京都市南区久世上久世町・久世高田町・久世川原町一体である。


より正確に言えば、下久世庄や近衛家領革島南庄も。


上久世庄が東寺領になったのは、建武三年、足利尊氏の寄進による。鎌倉時代は北条得宗家領であった。


当日は阪急桂からスタートして、すぐ近くにある久遠寺という浄土真宗本願寺は西山別院に行き、その後暦応3年にはすでに見える今井用水へ。

↑これ。約700年前にはこの世に存在していたと思われる用水路。コンクリートで覆われているけれども、今でも使われています。

そこから近衛家領革島南庄へ。

ここが革島庄の産土神三宮神社。今でもきちんと管理されているようで、小さいながらも社務所もあった。ここに着いたときに、地元のおばさんが社殿の前に額ずいてお祈りを捧げていた。ものすごい太い木があって、本当に昔から鎮座していたらしい。今でも在地では信仰が生きているんだなあ。

ここが革島庄の在地領主で庄官であった革島氏の館跡であったところに鎮座している春日神社。ちょうど堀を埋めたところに建っているらしい。

革島氏は佐竹源氏の流れを組む在地領主で、尊氏の時に御家人になったのだけど、その後は近衛家の庄官として中世を過ごし、江戸時代に至っても在地武士としてこの館跡に居住していた。革島家に伝わった文書類は今は京都府立総合資料館に所蔵され、重要文化財である。


革島館のすぐ横を流れる今井用水。4〜5mの幅があり、今でもざぶざぶお水が流れておった。


これは近世の革島館の絵図に見える用水と思われる用水路。絵図上の位置は動いていないように思われる。


奥の森が革島館のあった場所。


この様に今でも用水は流れていて、所々に見える農地を灌漑しているようである。また工業用排水路としても使われているそう。



ここからさらに南下していよいよ東寺領上久世庄へ。


ちなみにこれは今年の秋に開業したばかりのJR桂川駅



ここは暦応年間の『上久世荘絵図』に見える綾戸国中神社。現在はすぐ西側に東海道新幹線が通っていて、その建設のために隣地であった現在地に遷座したとのこと。絵図では綾律社として名前が見える。なぜかここから祇園祭の際に、駒形稚児が遣わされている。


現在は久世川と呼ばれる用水路。この川は綾戸国中神社のすぐ西隣を通っていて、現在は一部新幹線の高架下になっているのだけど、露出している部分もあった。これも絵図に「井」として見えるものではなかろうか?歩けるようだったので、歩いてみた。


そしてここがメインディッシュといっても過言ではない、上久世庄の鎮守で北限に位置する医王山蔵王堂光福寺。

これも絵図に「蔵王堂」として見え、「東寺百合文書」のなかにも、庄民がここで一揆を結んだとか、起請したとか、東寺から住職を補任したとか色々見える寺である。

それなのに、いきなり鳥居がある。ちなみに寺伝や近世の地誌類では天暦年間創建という。


門は平成の再建。創建1050年記念事業で門を作ったと碑にあった。

鬱蒼とした雰囲気を醸している。


これが本堂である。中はもちろん見られなかったが、吉野の蔵王堂と同じように諸社が配置されていた。

木々が生い茂り、いかにも庄民が起請したり、一揆を結んだりしそうな雰囲気であった。

在郷軍人会の写真なんかが飾ってあって、今でも庄民の紐帯と思わせるような感じであった。


ここから一歩出ると、そこはもう現代である。ここから数百mには桂ダイエーがあって、近代化の波がすぐそこに押し寄せている。といいつつダイエーでお昼食べたんだけど。


なんというかイメージできることって非常に少ない。田んぼがもう少し残っていればちがったのだろうけど、ほとんど宅地になっている。洛中のベッドタウン


そこから今度は庄園東側へ歩きに行った。東側には今井用水ではなく、「たかはね井」という用水が流れていて、現在でもそれが残っている。

どうもこれらしいのだが、よくわからなかった。いろいろ見て回ったが、結局断定には至らず。何しろ隣に大きな用水路が流れていて、そっちかもしれなかったからだ。


ともかくこのたかはね井を南下して、次は下久世庄へ入った。


下久世庄は上久世と違って、入組型庄園で、東寺だけでなく大小34の領主が下久世庄にある田地を領有している庄園である。領有関係は複雑でも、在地は下久世庄としてまとまっており、庄民はここに存在して田畑を耕作していたらしい。


これは下久世庄の鎮守?であった厳島神社である。近世には少なくとも存在していたらしい。細かいことはよくわからない。

ここも鬱蒼としていたけど、隣は工場、マンションで油の臭いがぷんぷんしていた。聖域を侵していたね。


こっちは福田寺という寺なんだけど、これは『下久世庄絵図』に見える。

残念ながら入れなかった・・・


と、ここで見学ポイントは全部終わった。


庄園の臭いはあんまり感じられなかったけど、楽しい旅であった。