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- 作者: 佐藤弘夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/04/11
- メディア: 単行本
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久々の日本史。
確か日経かなんかの新聞の読書欄で紹介されているのを知って、なおかつ大学の図書館で見かけてずっと気になっていたのだ。
本書は日本中世に書かれていた起請文(きしょうもん)*1という古文書を素材に、中世の思想史を描くという作品。
面白いのは、起請文に書かれた神仏の名前を検討して、仏教の守護神たる梵天帝釈天というグループ、道教の神々のグループ、日本の神々、仏像としてある仏のグループ、疫神のグループという順で起請を立てるという法則があることです。
日本の神仏より、インドや中国から渡ってきた神々のほうが上位と考えられていたようです。
こうした起請文が鎌倉から室町まで年代・地域を問わず、作られていたことからかなり普遍的な思想と見なして、当時の人々のコスモロジーを解き明かしていきます。
起請文から分かることは、中世の人々は、仏教の十界論に根ざした世界認識を持っていたようです。要するにあの世(彼岸)の仏と、この世(此土)の神仏とを順列させて書いているのです。本地垂迹説ともあいまって、日本の神仏はこの世の仏として認識され、現世利益や罰を下す神として認識されていました。
こうした一見多種多様でわかりにくい思想世界が起請文を手がかりとすることで、理論化され、かつ当時の人々の意識にまでせまることができたというのは、読んでいてとても興味深く思うところでした。
中世人は仏教と神道と道教とが混ざり合って、独特の世界観を持っていたのです。現代では仏教・神道は完全に分離してしまい、道教・儒教に至っては蔭を潜めています。
豊かな精神世界を垣間見たような気がして、面白く読ませていただきました。
ただ私はもっと起請文の古文書学的分析があるのかと思っていたら、そういう部分はあまり無かったので、拍子抜けしてしまったところはありましたけど。
最後に筆者は日本思想の問題点に関して、興味深いことを述べていますが、長くなってきたので、ここいらで仕舞いたいと思います。
夏休みの間にしたことで、唯一といっていいほど有意義なことでした。あとはまあ遊んじゃったからなあ。
心をいれかえてがんばろう。
*1:起請文とは、神仏に対してなにかしらの誓いを立てて、もしそれが破られれば誓いを立てた神仏から罰を蒙るという内容を記した宣誓書のこと。料紙のうらに寺社の午玉宝印が記されたものを使うのも特徴。