太宰治『斜陽』1950 新潮社

斜陽 (新潮文庫)

斜陽 (新潮文庫)

太宰って、このころ暗かったんだろうね。なんか陰鬱だよ。『人間失格』とはまた異なった、人のあり方を描いているのだと思います。沈んでいく貴族。貴族にもなれず凡下にもなれず、居場所をなくして、麻薬中毒に陥って自殺する弟、直治。恋と革命のために生きるかず子。俺の場合は、世界観があまりにも違いすぎて、ちょっと感情移入しにくかったのか、うまく感想を表現できないです。強いて言えば、『人間失格』が人としてのあり方を問うものであるなら、『斜陽』は生き方を問うものなのでしょうか。どっちも金持ちの息子、娘が主人公ですが、受ける印象はぜんぜん異なりますね。『斜陽』は解説にもあったけど、昭和という時代における生き方を問うもの、『人間失格』は人間の本質に迫るものという感じがします。
いずれにしても、秀作であることには変わりないのですが、個人的には『人間失格』のほうが好きですね。

つぎは夏目漱石『こころ』1914初出 新潮社を読もう。