昨日の晩、日本引きこもり協会の番組で井上雄彦特集をやっていた。


寝る前、深夜1時頃に気がついて、翌早朝に起きるつもりだったけど、見始めてしまった。


ちょうどバガボンドスラムダンクの特集で、一年間の密着取材だったそうだ。



バガボンドに休載が多い理由がよくわかりました。ネームは毎週ギリギリ。締め切り当日までできあがっていないことがよくあるらしい。


自分の奥底に眠っている深い感情を必死に紡ぎ出して毎週漫画を描いているらしい。時代に受け入れられることも勝負論としてはありだけど、それよりももっと普遍的な、何時の世代にわたっても読まれる漫画を、人間を描きたいのだそうだ。


小次郎編が終わったとき、一年にわたって休載したのも、小次郎が関ヶ原直後にどうしようもない状況に追い込まれていって、人殺しを延々とやらないとけない状況になって、作者自身を小次郎に重ねて描いていくため、ものすごく疲れ果ててしまったのだそうだ。白い紙を見るのもいやになるくらい。


自分を空っぽにして、武蔵達の世界に入っていかないと描けないのだそうだ。


割と最近の連載まで追っていて、コミックス31巻の内容はカバーしていた。テレビの中で井上雄彦が見たことある絵のネームを描き、筆入れをしていく姿は感動ものだった。その鬼気迫る表情に夫婦で釘付けになった。


ネームは割と書き込まず、そのまま描いていくのだけど、一度描いた線は基本的に消さない、書き直さないのだそうだ。鐘巻自斎が出てくる頃からだと思うが、筆で書くようになって、筆の赴くまま、その動きを楽しんで描いている。


ここ最近、富に絵になってきているなあと思っていたのだけど、まさか書き直ししてないなんて。


作者はあまりストーリーは重視してないみたい。ネームも毎週毎週ギリギリで描いているみたいだし、綿密な計算があってやってるんじゃないようだ。


バガボンドは最初の頃が面白かったという人も結構多いけど、俺はむしろタイトルロゴが変わってからの方が圧倒的に面白い気がする。登場人物の内面をえぐり出していくような、武蔵の精神の成長を見届けていくような気分になることが多い。


30巻で「天」の存在に気づかされるシーンがあるけど、あんなセリフ、どうやって思いつくのか想像もつかなかったけど、様々な資料を使いつつ、最後は井上雄彦の内面の深奥から出てきていると思うと、ちょっと恐ろしくもなる。現代人の感覚ではない。



最後に「プロとは何か」と聞かれて、「向上する心を持つこと」と答えていた。あれほどの漫画を描いていても、よく描けた時とダメな時とがあるらしい。武蔵を見ていると、向上する心を持つことを体現する存在に思えてくる。