七人の侍(2枚組)<普及版> [DVD]

七人の侍(2枚組)<普及版> [DVD]

黒澤明七人の侍



もう、最高に面白かった。



妻とも、ここだけは意見が一致した。映画としては最高に面白かった。


俺はこれを超える時代劇は今のところ出ていない。



それくらいよかった。



妻とも話していたのだが、特に三船敏郎こと菊千代の立場が戦国時代っぽくって非常によかったし、島田勘兵衛の演技力に打ちのめされた。


以下、ネタバレ。

















菊千代の立場である、農民上がりの武士もどき。これっていかにも室町・戦国期の香りがした。自分が住んでいた村を野武士、守護代、国人、戦国大名被官に焼かれて追い出された民衆の立場を表していると思う。それでヤクザもどきになってしまう世相をよく表していると思う。


島田勘兵衛のような位の高い落武者もよかった。七郎次と再会したときに、七郎次が「二の丸が焼け落ちたとき水草をかぶって一晩すごした」という旨を言い、勘兵衛の城が落ちたときどういう気分だったという問いに対して「なんとも・・・」と答えたときには、これこそ室町の武士という感じがしてすごくよかったですね。そういう節操の無さが南北朝時代以来の武士の姿であると思います。


勘兵衛は村に着いたときに、村人の歓迎のないのに対して不信感を露わにして、久蔵が「俺は村人を切りたくなった」という旨の発言をしたとき、これこそ中世の身分制社会であり、庶民の実情を解っていない支配層という感覚が伝わってきた。きっと足利将軍家始め、支配者層はこういう感覚だったのだろうと思う。


近年の研究では百姓は武装した農民で戦は日常茶飯事だったという研究もあるが、日本全国津々浦々そうではなかったと思う。当時の百姓は読み書きも満足にできない人が多かったはずだし、ましてや「七人の侍」の舞台になったような小さな部落では読み書きできる人は一人いればいいほうだったのではないか。要するに教育の有無であり、劇中では百姓の受け答えの理解度にその辺が如実に表れているように思う。きっと中世の土豪と見まごうような勢力を持った農民以外はあんな感じだったのであろう。読み書きもできず、日常会話以外の語彙も乏しい。


内澤旬子『世界屠畜紀行』でもエジプトでは教育の有無を非常に気にするエジプト人が出ていたが、日本中世においても似たような意識はあったのではなかろうか。



勝四郎と志乃の身分違いの恋を取り上げたというのも前近代っぽくってよかった。決戦の前に身分違いだということはわかっても、気持ちを抑えられない!!という緊張感。




戦のシーンも泥だらけになって刀を振り回す菊千代にリアリティを感じた。血がブシューって飛び出る演出は一つもなかったけど、雨が降る中、馬が農民の槍衾にびびっておののく姿には「いくさ」のリアリティを感じたし、野武士の弓と種子島には驚異と恐怖を感じた。これこそ戦の緊迫感。飛び道具がこれほど怖いとは。バガボンドを読んだときに落ち武者狩り怖えええ!!と思ったが、それに近いリアリティを感じた。



野武士に倅を殺された御婆が、捕まった野武士を備中鍬で殺そうとするシーンは人間のリアルな心情を感じた。御婆が登場するまで、村民の復讐を押さえていた七人の侍も御婆の気迫には勝てなかった。肉親を殺されるということは、殺されてみないとわからないんだろうなと思った。俺は肉親を誰かに殺されたことはないから想像するしかない。


最後のシーンも本質を突いているように思えた。というより、思わされた。勝利したのは百姓なのだ。




黒澤明日本史学会よりも先に武士論の本質について確信を付いていた部分が有るように思った。それは菊千代の立場に端的に表れているように思う。





ぐちゃぐちゃくだらない感想はやめにすると、一言言えるのは、非常に面白かった。ということである。とにかく面白かった。休憩を挟んで200分近くある映画であるが、その時間を余裕で引付ける魅力と面白さを持った映画であった。



次も黒沢映画みたい!!七人の侍むちゃくちゃ面白かった。百姓の役やってる人のセリフが聞き取れなかったのが不満だったけど、言語が通じないと言うことも前近代っぽかった。単に音声技術の問題かもしれんが。