本を読む本 (講談社学術文庫)

本を読む本 (講談社学術文庫)

前々から気になっていたので、買って見ました。

『本を読む本』という題名ですが、その名の通り、どうやって本を読むかという問いに答えた本です。英語では"How to Read a Book"となります。野球にはバットの振り方など一応の「やり方」がありますが、本を読むという行為の場合について考察しています。著者は読み方を初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書と4つのレベルに分け、最終的に積極的な読者になることを目指しています。


「本なんて好きに読めばいい」という声が聞こえてきそうですが、これは主として教養書を読む場合を想定しています。前々からどうやって論文を読んだらいいのか悩むところは大きかったのですが、解決する手がかりになりそうな、良書です。

特に点検読書の一部分は日ごろやっていることであり、そのすべてをやればかなり本を読みやすくなります。また分析読書も一部は実践していますが、体系的に説明されると肯かれてることが多い。


点検読書とは、俗にいう流し読みとか斜め読みといった方法です。タイトル、目次、索引、序論、あとがきなど著者が読者の便を図るために丹精こめて作った場所をきちんと確認することで、大まかな内容をつかむことができ、2―3ページを拾い読みしたり、2−3行をぺらぺら読むことですべて読むべき本か否かを簡単に把握することができようになります。そして表面読みといってとにかくざっと読んでみることも大切です。この方法を使えば、いろんな本の大雑把な内容をつかむことができ、先行研究が膨大なご時勢に役に立つことでしょう。


分析読書とは一冊の本を体系的に把握することです。本の構造と内容の解釈を行い、その本に対する是非を論ずる方法です。単語から出発してキーワードは、キーセンテンスは?どの部分が何をいっているのか、ほかの部分とどう関連しているのか、著者が問題にしているのは何か、本の内容を2−3行で自分の言葉で説明できるか?など。ここは多すぎるので割愛しますが、特に自分の言葉で説明できるかが、その本の内容を理解しているかどうかの指標になるという意見は、まさにその通りであります。また読み終わって正確に内容を理解するまでは本の批評をしないということも重要です。人の話しは最後まで聞けということですね。


シントピカル読書はひとつのテーマについて、複数の本を同時に読むという作業なのですが、それだけなら誰でもできることです。読書は著者との対話といいますが、シントピカル読書ではこちらのテーマ関心に沿って、相手に話させることが重要です。これがかなり難しい。自分の問題意識が明確で、論点も明確にしないと著者からのしかるべき答えが帰ってこないのであります。これは分析読書をマスターしなければ難しい方法といえるでしょう。



この本には小説を読む方法も書かれているのですが、それはプロットをつかむことだそうです。それが説明できればよいのです。



私自身意識せずしてやっていることもありましたが、本を読む方法をより深く理解できるとともに、あまりに膨大な先行研究を前にして呆然としていたところに一筋の光が差したような気分になりました。また著者は難しい本を読めとも言います。ちょっと背伸びしないと読めない本を読むからこそ、本が読めるようになると。まさにその通りでありますな。強い敵を倒してこそ、レベルは早くあがっていくのですね。