思川バルーン

思川バルーン

楽月慎『思川バルーン』

なんとこれ、栃木県小山市が舞台になっている小説です!


小山市が舞台になっていることなんて本当に珍しいのです!!古今東西小山が舞台になるなんて!ありえない!下妻が舞台の物語があるんなら、小山だってあったっていいのだ!!


と、本屋で見つけて思わず立ち読みしてしまいました。本屋で1時間半たったままずっと読んでしまいました。最後まで一気読み。




以下、感想。ネタバレです。


友達の結婚式が小山でやるので、久しぶりに小山にやってきた主人公。大学時代に過ごした小山に戻ってきて、ついついその頃を思い出してしまう。大学生のグダグダな、世間を知らない妄想癖のある大学時代を思い起こしてなんだかなあという話。


小山が舞台なのはよくわかりました!明らかに市内の地名やらスポットやらあれこれ出てくるからわかるのです。特に駅前の大タコ屋が出てきたときは感動しました!!観光橋とか小山グランドホテルとか。思川は確かにバルーンがよく浮いています。正確には渡良瀬遊水地ですけど。あそこからはよく見えます。



しかし、正直に申しあげましてストーリー自体がなんだかもう一つです。主人公のキャラが立っていないというのでしょうか?なにがしたいのかイマイチわかりません。主人公は大学時代、何やら物書きをしていたように思うのですが、どうもそれがなんなのか、ストーリー上どんな位置づけなのか、よくわかりません。

そして小山が舞台であることがあんまり生きていないように思います。著者が実際に小山にある大学に通っていたらしいので、小山に対する思い入れはよくわかるんですが、小山でなくてもあのストーリーは書けたように思います。森見登美彦みたいに京都でないと書けないように、小山を位置づけてくれればよかったのですが。そうはいいながらも小山にそれを求めてしまうのもよくないような。どこにでもある地方都市ですからねえ・・・遺跡とか桑とか絹とか間々田とか生井とか大谷とかその辺の人たちも出してくれればもっと良かったように思います。


とかなんとか文句をいいつつも小山が舞台になるのはうれしいことです。著者には感謝ですね!!