日本の歴史〈10〉下克上の時代 (中公文庫)

日本の歴史〈10〉下克上の時代 (中公文庫)

ようやく読み終わりました。これの古い文庫のほうですけど。


南北朝時代は私の尊敬する佐藤進一先生が書いておられるのですが、こっちは昨年お亡くなりになった永原慶二先生がお書きになっておられます。


永原慶二の作品をまともに読んだのは、実はこれが初めてですが、独特のというか、時代をモロに反映したような内容にちょっと面食らいつつも、結構面白かったです。


概説書というだけあって、平易に書かれているし、俺が高校のときに習った室町時代像ってのはこの本の内容にかなり近いものを感じました。


すなわち、秩序のあるようでない、経済の著しい発展と、一揆の頻発。支配層の動揺などなど、一般の室町時代像を見たような気がしました。



現在の学説から見ると古い部分がたくさんありますが、それでも基礎となっていることを再確認したような感じです。


それにしても土一揆国人一揆を農民闘争と見て、その根底には農業生産力の増加とそれに裏打ちされた経済発展があることを評価する向きは、さすがマルクス主義史学!といわんばかり。


そういう方向で見ようとするし、色々な思いを仮託しているんだということがわかる、1970年代の歴史学のあり方が見て取れるような、ある種の歴史学に対する期待と熱さを感じるような、文章でした。



うだうだ書いていますが、要するに勉強になったということと、こういう見方だけでは歴史の全容は明らかにならないなと思ったわけです。


今はマルクス主義みたいな強い方向性と思いを持っている感じではないけど、もっと多方面から歴史を見ていこうとしているんだということを再認識しました。


これはこれで基礎として身につけておいてよかったと思います。