戦国期の室町幕府 (講談社学術文庫)

戦国期の室町幕府 (講談社学術文庫)

今谷明『戦国期の室町幕府』2006(初出1975)講談社

久々に歴史学の本を読破したけど、これ面白かった。


室町幕府の研究には欠かせない内容になっております。特に一章「東班衆の世界―室町幕府の財政と荘園政策」、四章「落日の室町幕府」は私の興味関心にマッチしていて、かなり楽しめる内容でした。


第一章では室町幕府の財政については、独自の視点から描いたもので、幕府の官寺である五山諸寺の会計を司る東班衆(とうばんしゅう)と幕府のつながりを考察し、幕府にとって五山禅院からの税金や献銭・献物などの収入は重要な財源だったことを明らかにしました。


一応自分の知識としては、五山禅院が祠堂銭という低金利の貸し金業を営んでいたことは知っていたけども、それを幕府は徳政の対象外にして保護したりして五山の保護に努め、またそこからいろいろな形で収入を得ていたことはあまりわかってなかったので、とても面白かったです(検討しようという目で読んでない)。


第四章、戦国期の室町幕府と幕府に成り代わるために画策した三好一族との政治的な動向を描いたものです。


戦国期までは室町幕府といえば

将軍―管領―守護―守護代―在地

という相当大雑把に掴めばこういう政治形態になっていたのだけれども、応仁の乱を経て幕府―守護体制が動揺し、地方統治が不可能な状況に陥ると、上記体制にも変化が現れます。


・将軍―奉行人―在地
・将軍―管領管領代(右京兆代)


などの政治体制になり、とくに後者は細川右京兆家(京兆とは唐名の官職であって、日本では右京大夫という)の独占体制となり、その代官である管領代というのが力を持っていたと述べられています。


それから細川家の支配も細川一族の内訌やら在地の動向やら堺公方の成立やらがあり、動揺し、細川氏の被官であった三好氏が成長を遂げ、いよいよ将軍を始め幕府を近江に追い落とし、三好長慶の代にいたって三好政権を確立したと、今谷氏は説いています。


これによって管領制は滅び(細川晴元の死亡)、将軍は近江に逃れ亡命政権となり、これを今谷氏は室町幕府の事実上の崩壊と呼んでいます。



三好政権は京都に本拠を構えあれこれやりますが、荘園領主(公家寺家)の力が強い畿内近畿では、領主権力の克服に至らず、結局信長の入京を持って崩壊してしまうと述べています。


とまあとても大雑把にまとめてみましたけど、こんな具合で、納得の行かないところなんかも多かったけど(特に幕府自体の評価と将軍権力との兼ね合い)、読んでて引き込まれてしまって、あっという間に読み終えてしまいました。


批判やら文句をいう気力は無いのでまとめるだけにしておきますが、やはり70年代に書かれた本は面白いなあと思った次第です。


これからも勉学に励んで少しずつでいいから知識を蓄えていきましょう!!