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- 作者: エリザベスキューブラー・ロス,Elisabeth K¨ubler‐Ross,鈴木晶
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: 文庫
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あー長いことかかって読んだ本だ。400ページくらいあるし。
筆者は前々から「死」について興味があって、それで故あってこの本にめぐり合った。
内容を簡潔にまとめると、著者のエリザベス・キューブラー・ロス氏(精神科医)が末期患者に「死ぬこと」をどのように考えているか、患者の周囲はどうそれを受け止めているかということをインタビューし、それから死ぬ過程と死ぬことを導き出したという、ターミナルケアの「聖書」と呼ばれている本である。
キューブラー・ロス氏によると、人間は死ぬまでの間、死を否認・怒り・取引・抑うつ・受容という五つの段階を経るという。同時に常に回復する希望を持ち続けていると指摘した。
周囲で看護する医者や看護師、ソーシャルワーカーは末期患者を敬遠するのではなく、患者と向き合って、死についてしっかり対話すべきであるとも述べていた。
そうすることで、患者も周囲も死を受け入れられるようになり、安らかな死を迎えることができる。
氏の話の中で印象的だったのは、死が近代以降、タブー視されるようになったということだ。
それまで、死というのはとても身近にあった。たいていの人は病気や怪我になった際、家で療養する。治らなければ、そのまま家で死んだ。
そうすることで、家族のみならず近所の人もみんなまとめて、人が死ぬということを認識できた。
しかし近代の病院が出来て以降、人はそこへ押し込まれ、患者の意思を問わず延命されるようになった。
患者は機械に繋がれ、家族や医師は脳波や心拍数だけを見ているようになった。患者はデジタルな波で表象されるようになった。患者の人格は無視されているのである。
死はそうして隔離され、遠ざけられた。
人間はいつか死ぬ。生きているということは、死ぬ向かって歩くことである。
現代を生きる私たちの身近に、死は転がっていない。死ぬことを実感することもない。平安京みたいに死体があちこちに捨てられていて、死臭が家の中にまで漂ってくることもない。
私はもっと自分が死ぬことを意識した生き方をしたい。
いつか死ぬ。明日かもしれないし、一年後かもしれないし、50年後かもしれない。
だから一日一日を一所懸命に生きる。一つの所に命を懸けるのである。
この本を読んでこんな取りとめもないことを考えた。人の命を預かる職業に就いている方には是非一読して欲しい、名著である。