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- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/06
- メディア: 文庫
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画像が無いですけどね。
実は私、太宰治が好きなんです(過去ログ参照)。
こういうことをいうと「暗い人・・・」と差別意識を持たれるみたいですが、本作はそんなことありません。
或るとしの春、私は、生れてはじめて本州北端、津軽半島を凡そ三週間ほどかかって一周したのであるが、それは私の三十幾年の生涯に於いて、かなり重要な事件の一つであった。
と、故郷の津軽を廻ったときの旅行記、エッセイのようなものですね。
道中、太宰は友人や親族と出会っては酒を飲み交わし、昔の話をし、自分が生まれ育った土地、津軽を改めて見聞しています。
太宰自身は東京に出てきて、大学に通っていましたが、金がなくなっては実家の兄にせびっていて、とても微妙な空気が兄と太宰の間には流れていました。
津島家は津軽地方の一地主で、長男でなかった太宰には父との隔たりを感じていたようです。
本作には太宰が幼少のころ教育係だった「たけ」というおばさんが出てきます。
太宰はたけと再会したときに「私には何の不安もない。まるで、もう、安心してしまっている。・・・(中略)・・・(生母は)このような不思議な安堵感を私には与えてくれなかった。」と、感慨深く述べています。また「親孝行は自然の情だ。倫理ではなかった。」とも。
太宰というと「自殺」のイメージが付きまといますが、このころの太宰は精神的にも安定しており、たけとの再会がよほど懐かしかったようです。
なんだか心の温まる一場面でした。
本編通して、津軽の人、津軽の自然、津軽の景色がゆったりと眼前に広がるような小説でした。日本酒が飲みたくなりました。
そうそう、私にとってこの小説で忘れられないのが、「卵味噌」の存在です。
卵味噌は私の母が風邪を引いたときに作ってくれた料理です。母の母(つまり祖母)から教わった相伝の料理だそうです。それと全く同じものが本作に出てきます(母の母方の実家がもともと青森)。
作中ではカヤキという貝がらに鰹節で出汁をとり、味噌を溶かして、卵を落として食べると紹介されています。風邪のときはおかゆと一緒に食べる。
ほとんど一緒で、私が作るときは鍋に鰹節で出汁をとり、濃い目に味噌を溶かします。それに溶き卵を落として半熟くらいで日を止め、余熱で温めます。
かゆの上にもって、食べるんですけど、素朴であったかくて旨い。
京都に来てからもよく作っているので、これが出てきたときはびっくりしました。同時に、私も故郷の母を思い出しました。この間、会ったばかりですが。元気にしてて欲しいものです。
そして太宰との距離が少し縮まった気がします。
自殺する運命なのかな??