変身・断食芸人 (岩波文庫)

変身・断食芸人 (岩波文庫)

 断食芸人を読みました。立ち読みで。


 どっかの都市で檻に入って断食をしている芸人の話です。最初は人気があって見張りが付いたり、相方がいて興行的なこともやっているんだけど、徐々に人気がなくなっていきます。


 相方と袂を分かち、サーカスに入って断食芸を続けます。でも誰も見向きしてくれなくて、檻の中で孤独に衰弱して死んでしまう。という話ですね。


 これもこれでいやな話です。なんで断食芸人は断食をしたがるのか。それを続けようとするのか。世間の流れに逆行して、結果孤独死を選ぶのか。よくわかりません。


 筆者はザムザのほうが嫌な気分になるし、でもひきつけられますね。

カフカ短篇集 (岩波文庫)

カフカ短篇集 (岩波文庫)


 これに入っている、「火夫」「判決」を読みました。


 前者は女中に手を出したカール少年が父母に放逐され、アメリカに渡ってきて、その船の中で火夫に会う話。火夫は船の中で不当労働させられていて、それをカール少年と一緒に船長に訴えに行きます。船長室にはなぜかカールの叔父(アメリカ上院議員)がいて、叔父と一緒に暮らすことに。一方、火夫の訴えは空しい結末を遂げる。という話です。


 後者は意味不明。主人公ゲオルクが父親に友人のことと婚約者のことを色々言われて、騙されたと思い、自殺しちゃう話。


 後者はマジで意味不明なので、無し。一言嫌な話だと。


 前者も嫌な話。カール少年は放逐され、火夫は船の中で孤独です。少年の孤独感は火夫に会うことで緩和されそうになりますが、結局叔父の元で暮らすことになり、叔父には親近感が持てず、孤独感を感じたままです。火夫も結局訴えを聞きいれてもらえないようで(作中、明確にそれを描いているわけではない)、孤独なまま取り残されていきます。


 四作読んで感じたことは、カフカは孤独を主題にしたテーマが多いということです。これは『変身』の解説でも指摘されていますが、実際読んでみると、カフカにとってかなり考えるべき問題だったことがわかります。


 ザムザも、断食芸人も、ゲオルクも、カールも、火夫も、みんな孤独を抱えています。周囲から隔絶されています。カフカは婚約者と結局結婚しません。結婚はしたい、でも結婚したら自分の中の孤独が消えてしまう。そう考えていたようです(『変身』解説)。


 孤独は彼にとって大切は文学的主題だったそうですから、読んでみるといかに孤独を大切にしていたのかわかるような気がしました。