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人間失格 (新潮文庫)

「恥の多い人生をおくってきました」

　太宰治『人間失格』

　就活ですさんでいる今、この本は一筋の光明です。

　こんなに人生堕ちている人がいるのかと思うと、少し救われた気がします。と同時に、人は自分自身の中にある他者に対する恐怖や怒りなど様々な黒い感情をひたかくしにして、道化を演じて生きているということは、人間という存在の本質をついているような、そんな気がしました。といっても、そこに出てくる人は、ちょっと普通の人とは考えられない、人に対する恐怖を抱いた人物なのですが。

　人は誰しも道化を演じて生きている。

　このことは誰しもが感じている実感のあることなのですが、それを苦にして？自殺した太宰治が言うと、とても説得力のある事柄に聞こえてきます。誰しもが感じ入ることだからこそ、本質的であり、太宰みたいに思いつめることのしない凡下どもは生きていけるのでしょう。ぼくは今日これを読んで、なんだか気が楽になりました。

　こんなことは哀しいことなのかもしれませんが、でも、人間の本質を一側面においてとらえている作品だと思いました。ただこれが完成作としては遺稿という形になっていて、太宰が自殺にいたる直前にかかれたことを思うと、すこし悲しい気もします。