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- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/02
- メディア: 文庫
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2回目です。
これやっぱり名作です。前にも感想書きましたけどね。
源実朝に仕えていた某の語り手調で話が進んでいきます。実朝の言葉がカタカナで書かれているのが、とても印象的で某の目線から見た実朝の崇高さがあらわされているように思います。
「アカルサハ、ホロビノスガタデアロウカ。人モ家モ暗イウチハホロビハセヌ」
「何事モ十年デス。アトハ、余生とイッテイイ」
「ドコヘ行ッテモ、同ジコトカモシレマセン」
太宰治は実朝をとても尊敬していたそうです。これを描き切った時もとても満足していたそうな。
解説によると、これは太平洋戦争下に書かれた小説で、その時代にして真の芸術家像を実朝に託したとのこと。実朝のただ歌を求める姿はまさにそれに近しい。随所に挿入された吾妻鏡書き下しも、なんだか雰囲気を誘います。
実朝の崇高さと北条義時をはじめとする幕閣の俗世間具合が見事な対比となっています。芸術家とはかくも孤高なるがゆえに、素晴らしいものを残すことができるのでしょうか。
太宰の小説は本人の気持ちがすごく伝わってきます。なかでも太宰の理想を描いたこれは、とても好きな作品です。太宰の考え方というか世界観が美しく紡ぎだされているようで、人間失格とは違った魅力があり、読んでいてなんだかじわじわくる本なのです。