キッチン (新潮文庫)

キッチン (新潮文庫)

吉本ばなな『キッチン』新潮文庫1988

なぜかはまぞうが全然使えないので、とりあえずこれだけで。



初めて吉本ばななの作品を全部読みました。前々から読もう読もうと思っていたのですけど、読んでみたらやっぱり面白かったです。


天涯孤独の身である桜井みかげとみかげの祖母が通っていた花屋でバイトしていた男子学生田辺雄一のちょっと変わった同居生活を描いています。


同居といっても、毎日毎日セックスに明け暮れるという話ではなく、雄一のニューハーフのお父さんと一緒に生活をして、祖母が死んでしまったみかげの心の動きを追っていくというテイスト。


とても変な設定だし、話もなんか変だったけど、心の温かくなるストーリーでした。



みかげはなぜか台所が好きで、祖母と2人暮らしをしていた台所や祖母が死んだ後住みはじめた田辺家のキッチンも重要な要素になってきます。


台所がとても心の安らげる場所であったり、キッチンを掃除したり、ジューサーでジュースを作ったり、田辺家を出て行ったあとみかげは料理研究家の女性に弟子入りしたりと、キッチンにまつわる話が瑞所に織り込まれています。





とか書きましたけど、うまくキッチンの位置づけを把握できてないので、この辺で。



とかく祖母に死なれて天涯孤独のみかげ、ニューハーフの父である母が殺されて天涯孤独の雄一。


天涯孤独ってさみしいだろうけど、同じ境遇の人が身近にいて、ふしぎな感覚で繋がっているとしたら、思っているほどさみしくないかもしれない。



自分を生んでくれた或いは、血の繋がっている人が一人もいなくなったら、きっとつらいだろう。そんな近しい人ばっか死んだら、自分も生きることを放棄したくなるかもしれない。


でも生きているかぎり生きていかないといけないし、人は生きている限り独りなのだ。



こうして見ると重たいテーマだけど、中身はやたらほっこりというはふわふわというか、とかく不思議な文章で、とても面白かった小説です。



他の吉本ばななも読みたくなりました。まあでもこんなことに現を抜かしていてはいけないんだろうなあ。