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- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 文庫
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こつこつと読みすすめて漸く昨日の晩に読み終えました。
愛を信じない青年、城戸昇は即物的関心から女の身体を求めていた。ある日であった人妻、顕子。
顕子は不感症であった。
というお得意の話なわけです。昇は、愛情の存在を信じていない青年で、大変な美貌と財力の持ち主。幼い頃から鉄や石を道具にして遊んできており、祖父城戸九造の影響からかあまり愛を受けて育ってきていないらしい。
そんな昇は毎晩、女を漁っては、一回きりしか寝ないのでした。
しかし顕子に出会って、それが変わります。
顕子は不感症なのです。石のように動かない顕子をみて、昇は帰って今までの女との違いを思い知らされ、顕子は顕子で怒らない昇を見て、お互いに惹かれるようになります。
その後昇は、ダム建設のために山奥で越冬することになり、ダム技師たちと雪に閉ざされた宿舎で寝食をともにし、自然の美しさに触れ、彼自身の心に微妙な変化が現れます。雪に閉ざされる少し前、そこここを散歩していたら、滝を見つけたのです。顕子に似た滝を。
普段なら絶対に言わないのろけ話も、昇は同僚に「顕子は感じないから、好きなんだ」と漏らしてしまいます。
一冬下界の人間と触れ合わないで、ダム技師とだけの人間関係を味わって、下界に下りてみるとなんか面白くない。
そんで顕子とセックスをする。
顕子は感じる⇒不感症が治る。
そしたら、顕子は普通の女になってしまったのです。普通に昇を愛する、そこら辺の女と変わらない女。
そんな顕子に、昇は心理的に距離を置くようになります。
顕子は昇の同僚から、顕子を好きになった理由を聞かされて、ショックのあまり死んでしまうのです。もう感じてしまっている自分は、愛するに値しない女になってしまった。
五年後無事ダムも建設され、もう一度ダムへ行くと、顕子の滝もなくなっていた。
そんな話で終わってしまうのです。
普通セックスをするなら、男は感じている女を相手にするほうがよいはずなんです。
でも、三島は「感じないから好き」だと城戸をして言わせしめます。
感じさせるまで、昇も顕子に惹かれていました。同じ女とは二度寝ないというのに、顕子に限って二度以上寝たわけです。
そうしたら、つまらなくなってしまった。
欲しいと思っていたものが手に入ったとたん、色あせてしまうように。
こんな愛の形態が、ありえるのか。退廃的な中に、愛の形を問う。
印象としては、他の三島作品に比べてわかりやすく、文章も読みやすい感じでした。そうはいっても文章の美しさに打ちのめされそうになりながら、最後の展開に驚きましたけど。
なんか結婚してみて、こういうのを読むって言うのも変な気がするけど、こういうのを読んであれこれ考えめぐらせるのもいいなあと思ったのでした。